まずは医療法人メリット・デメリットをよく理解し検討する必要があります。

そして、設立すると決めれば年2回の医療審議会に合わせて計画的に手続の準備をする必要があります。日々の多忙な業務をこなしつつ、厳しいスケジュールのなか設立の手続きを行います。

医療法人のメリット

<①分院開設が可能になる>

法人化により、個人経営の診療所には認められていない分院開設が可能となり、老人保健施設訪問看護ステーション等の経営ができる。

<②税務におけるメリット>

1.個人の所得税・住民税の超過累進課税のみから法人税・法人住民税との併用節税メリットが得られる。

2.理事長の所得について、給与所得控除が適用される。

3.理事配偶者や後継者を配して所得を分散することにより、節税メリットが得られる。

4.退職金(所得税・住民税の大幅軽減が可能)の受領により老後の生活設計が安定する。

5.借入金利子、生命保険料等経費算入できる支出項目が増える。

6.赤字の繰越し控除が7年間可能(個人は3年間)。

7.自由診療への消費税医療法人設立から2事業年度非課税となる。

<③事業承継がスムーズにできる>

個人開設の場合は名義変更手続ができず、院長が廃院をしてから後継者新たに開業・開設の手順を踏まなければならない。

法人の場合は、予め後継者理事・社員に配し、理事長と病院・診療所の管理者を変更するだけで済む。 

<④資金繰り負担が軽減できる>

個人開業医と異なり、社会保険診療報酬支払基金の受取時源泉徴収がされないので、資金繰り負担軽減される。また、金融機関から融資が受けやすくなる。

医療法人のデメリット

剰余金の配当禁止される

交際費の損金算入制限される 

③事務手続が増加する

社会保険が強制加入となる

新規医療法人の設立申請

医療法人の設立申請は、都道府県ごとに定める申請時期に準拠した、年2~3回のタイミングに合わせて行います。

多くの申請書類は各都道府県が詳細に定め、様式としてホームページ上においてあるか、説明会において配布されます。

<設立の要件>

病院、医師または歯科医師が常勤する診療所老人保健施設を開設する社団または財団であること。

②医療法人の業務を行うに必要な資産を有すること。

定款または寄付行為により、役員診療所の開設場所など法定事項を定めていること。

都道府県知事(複数の都道府県に跨るときは厚生労働大臣)の認可を受けること。

⑤設立の登記をすること。

<医療法人の構成>

社員
社団医療法人は原則として3名以上の社員を構成要素とする。

理事
原則として3名以上理事会は執行機関。理事長は原則として医師または歯科医師である理事から選出し、医療法人を代表する。

監事
1名以上。会計と理事(長)を監査する。

社員総会
医療法人の最高意思決定機関。定款の変更社員の除名解散及び合併等については総会の議決が必要である。

<設立手続きの流れ>

(1) 定款・寄付行為[案]の作成

(2) 設立総会の開催

(3) 設立認可申請書の作成

(4) 設立認可申請書の提出(仮受付)

(5) 設立認可申請書の審査面接等を含む)

(6) 設立認可申請書本申請

(7) 医療審議会への諮問

(8) 答申

(9) 設立認可書交付

(10) 設立登記申請書類の作成・申請(法務局)

(11) 登記完了(法人成立)

医療審議会が概ね半年毎に開催されますので、設立の機会年2回となります。

<設立のチェックポイント(都道府県により多少異なります)>

出資した者必ず社員となる。出資していなくても社員となれる。

監事理事を兼任できない監事社員でもよいが、出資は不可。設立しようとする法人と利害関係が深い者(理事長の配偶者など)は不可

医師または歯科医師のほかに、診療所の場合は看護婦歯科診療所の場合は歯科衛生士常勤1名以上いることが必要。

負債は原則として医療法人に引き継ぐことができる。但し、法人化前の運転資金、消耗品類の取得に要した費用に係る負債引き継げない。負債の引継ぎには債権者の承諾及び根拠資料を要する。

⑤原則として初年度の年間支出予算の2ヶ月分に相当する運転資金が必要であり、預貯金・医業未収金などの換金が容易なものが要求される。

診療所などは賃借でもよいが、賃貸借期間が10年以上であることが必須。

<先生にご準備いただくもの>

提出書類には、先生ご自身にご準備いただかなければならないものもあります。

1.理事・監事になられる方々の履歴書と印鑑証明
2.先生の個人口座の残高証明書
3.個人院開設時診療所のために投資された経費(内装工事費、機材費、保証金等)の領収書
4.借入リース契約書コピー
5.現在の診療所の図面

ほかにも、都道府県ごとのルールや現状等に合わせていろいろ追加が出てまいりますが、どちらの都道府県でも共通する準備書面上記となります。

<税理士の先生にご準備いただくもの>

先生にはすでに税理士先生がついていらっしゃることと思いますので、税理士先生には、

1.先生の過去2年分の確定申告書類

2.固定資産台帳

のご準備をお願いすることになります。尚、前述の先生ご自身にご用意いただく書類の一部は、税理士先生が管理されているケースもございますので、先生方でご相談、お打合せをお願いいたします。

諸々提出して、約半年にわたる補正やり取りを経たうえで、最終的に医療審議会を通れば都道府県知事からの医療法人設立認可書が出ます。

<その他に必要な届け出・申請>

この後にも、

  • 法人登記→登記事項の変更届出(都道府県)
  • 医療法人立診療所の開設許可申請(保健所)
  • 実地調査(保健所)
  • 個人立診療所廃止届(保健所)
  • 法人立診療所開設届(保健所)
  • 新規医療機関コード申請(厚生局)
  • 施設基準の再申請(厚生局)
  • 生活保護法指定医療機関申請(都道府県保健局)
  • 被爆者一般疾病医療機関再申請(保健所)

を速やかにしなければなりません。

これらすべてが完了するのは、法人設立の認可書が出てから最短でも2か月はかかりますことをご覚悟ください。また医療法人が設立されますと、医療法人を所管する都道府県(や保健所)に対して、諸々の届出義務も発生します。

こんな感じで、医療法人の新規設立申請手続きは時間も労力もかかります。
これを、診療されながら対応してゆくのは正直不可能だと思われますので、是非とも申請になれた行政書士にご依頼されることをお勧めします。