韓国人の方の帰化申請の手続きについて。

韓国人の帰化申請については日本国と韓国との歴史的背景から同じ韓国人であっても韓国生まれの韓国人と日本生まれの韓国人(但し、日本生まれであっても要件があり、特別永住者の要件【平成3年(1991年)11月1日に施行された日本の法律「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により定められた在留の資格】を具備している方を指します。

以下「在日韓国人」及び「特別永住者」という。)とでは準備する資料及び内容が異なります。

2つの異なる韓国籍の方がどのような手続きを踏めば日本人に帰化できるのか、日本国籍になるための申請手続きの流れや注意点を解説します。

先ず、前掲でも説示したとおり韓国人の方の、日本への帰化申請には大きく分けて2類型あります。

1.もともと韓国で生まれ、韓国籍を持っていて、日本に帰化しようと考えている方
2.韓国籍(朝鮮籍)のまま日本で生まれ、日本に帰化しようと考えている方【いわゆる特別永住者といわれる在日韓国(朝鮮)人】

今回の記事では、上記の2類型に加えて、日本国民との身分関係の係わりがある場合には申請資料が相当数になりますのでその点を峻別して日本への帰化申請手続きを解説します。

韓国人の日本への帰化申請の実態

令和2年度のデータでは、韓国、朝鮮籍の方の帰化数は4113人と、全体の帰化許可者数の45%にものぼります。

韓国人が帰化するために必要な書類
韓国出身者 / 在日韓国人(特別永住者)共通

1. 帰化許可申請書
2. 親族の概要を記載した書類
3. 帰化の動機書 *在日韓国人(特別永住者)省略
4. 履歴書
5. 生計の概要を記載した書類
6. 事業の概要を記載した書類
7. 住民票の写し
8. 国籍を証明する書類
9. 親族関係を証明する書類
10. 納税を証明する書類
11. 収入を証明する書類

12. 在留歴を証する書類
■在勤及び給与証明書
■源泉徴収票
■(各種)課税証明書・納税証明書・確定申告書控え等
■国民年金の「年金定期便」や「年金保険料領収書」の写し等

【資産関係】
■不動産登記簿謄本
■預貯金現在高証明書又は預貯金通帳のコピー

【事業関係】
■許認可証明書(事業免許等)
■商業・法人登記簿謄本
(1)その他の提出資料
【履歴書(その1・その2)の記載内容を立証する資料】
■最終卒業証明書又は卒業証書 *在日韓国人(特別永住者)省略
■技能・資格・免許等に関する証明書
■自動車運転免許証の写し
■運転記録証明書
■スナップ写真
■パスポート・再入国許可書のコピー
(2)住所を証明する書面
■住民票
(3)収入・資産・事業に関する各種証明
【収入関係】
帰化するために必要な書類の詳細は、複雑で量も多くケースバイケースです。

(1)国籍・身分関係を証明する書面

■韓国の「除籍謄本」及び現行の家族関係登録制度に基づく「登録事項別証明書」

韓国の戸主制廃止にともない、戸籍法に代替する法律として「家族関係登録等に関する法律」が制定(2007.4.27.) 、法律第8435号として公布(2007.5.17.)され、西暦2008年1月1日付施行されています。

主な内容は、戸主=「家単位」でまとめられていた身分関係の登録が「個人単位」での登録に変更となりました。

在日韓国人(特別永住者)の場合【必要書類】

■韓国の「除籍謄本」及び現行の家族関係登録制度に基づく「登録事項別証明書」
■日本で発生した身分事項に関する証明書
★出生届の記載事項証明書
★死亡届の記載事項証明書
★婚姻届の記載事項証明書
★離婚届の記載事項証明書(裁判離婚の場合には、調停調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本も必要)
★親権者変更届等の記載事項証明書(裁判離婚の場合には、調停調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本も必要)
★養子縁組届の記載事項証明書
★認知届の記載事項証明書
★就籍届の審判書

韓国出身者 / 在日韓国人(特別永住者)共通
(日本人との係わりがある場合)【必要書類】

■韓国の「除籍謄本」及び現行の家族関係登録制度に基づく「登録事項別証明書」
■日本で発生した身分事項に関する証明書
★出生届の記載事項証明書
★死亡届の記載事項証明書
★婚姻届の記載事項証明書
★離婚届の記載事項証明書(裁判離婚の場合には、調停調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本も必要)
★親権者変更届等の記載事項証明書(裁判離婚の場合には、調停調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本も必要)
★養子縁組届の記載事項証明書
★認知届の記載事項証明書
★就籍届の審判書
■日本の戸籍(又は除籍)謄本
★帰化申請者の配偶者(元配偶者、内縁関係を含む)が日本国民である場合
★帰化申請者の子(養子)が日本国民である場合
★帰化申請者の婚約者が日本国民である場合
★帰化申請者の父母(養父母)が日本国民である場合
★帰化申請者が日本国民であった人の子である場合
★帰化申請者が日本の国籍を失った人である場合
★帰化申請者の父母及び兄弟姉妹の中で既に日本に帰化をした人がいる場合

韓国(ハングル)戸籍翻訳の注意点

先ず、韓国戸籍についてはハングル文字の理解や韓国の旧地名、そして日本の旧地名を理解していなければ自分で翻訳する事は相当な時間と労力を要します。

戸籍収集の知識と経験がない方が、適当に戸籍収集をして帰化に必要な戸籍が収集できず(韓国の登録基準地が解らない若しくは、その登録基準地は一致していても、自分自身の祖先に繋がる戸主が見つけられず、在日韓国領事館でも解らない場合、本国韓国の登録基準地のある役所に連絡を入れ韓国語で問い合わせなければならない等。)結局1年を経過しても収集できなかったケースも珍しくありません。

帰化申請には真正な韓国戸籍の提出が必須

次に、在日韓国人の場合はその都度戸籍整理(出生、結婚、離婚、転籍、就籍、養子、死亡、戸籍主変更等)をしなかったケースが多く、つまり戸籍の記載内容と実態が一致していないケースがかなり多くあります。

例えば、極端な場合には同じ家族の兄弟姉妹でも弟だけ本国に出生登録をしていない(当該場合:無国籍となる。)場合や、親の死亡についても、父親や本国に死亡登録をしたが、母親はしていない(当該場合:本国では生存している事になる。)

又、韓国の戸籍では日本の市区町村に出生の記録は記載されているが実際日本の市区町村に出生記録を請求すると提出された記録はない(当該場合:日本では出生していない事になる。)等他にも常識を超えた様々な変則的なケ-スがあります。

したがって、実父母や自分の氏名、生年月日が戸籍と一致していなければ様々な手続きを経て修正しなければ、帰化申請の受付自体がされません。

日本の場合には、外国人は2012年7月まで「外国人登録原票」によって日本各地にある市区町村で管理されてきた経緯があります。

そして、申請人本人の出生からの経緯や実父母そして兄弟姉妹の内容の記録が記載されていますが、韓国戸籍が外国人登録原票と一致している必要があるのです。

最後に、親の婚姻届や申請人自身の出生届や婚姻届等が一致しない戸籍も法務局に受付される事はありません。

例えば、戸籍整理をするときに前妻の婚姻届を出していなければ、前妻の婚姻、離婚の記録を省略することが数多くあります。前妻の婚姻を登録するときに後妻の子として登録するのです。したがって、出生届の実母とは一致する事はありません。

よって、韓国の家庭裁判所の許可を得て戸籍の修正をする必要があります。

在日韓国人の帰化の実態

在日3世の方については在日4世の方にせがまれて家族一緒に帰化する場合が多くみられます。

その他在日4世の方については、大学在学中に単独で帰化申請し卒業ないし就職までに帰化をするとか、又は結婚前に帰化したいとか、結婚後でも子供が生まれ当該子供が物心つく前に帰化したい(日本人と結婚した場合、自分だけが外国人になるため。)と考える方が多いです。

在日韓国人は言うまでもなく何代にも渡り日本で生まれ、日本に生活基盤があり日本国民と何ら変わらない生活を送っています。

むしろ、帰化する事が日本で生活する上で様々な違和感がなくなるのであればそれは自然な摂理であると思います。

韓国籍の方が帰化するときの注意点(素行要件)

素行要件については、国籍法第5条第1項3号に規定されています。

したがって、素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態度、有罪判決を受けた者や執行猶予中の者は一定期間申請ができない事になります。

そして、納税の義務や年金加入の義務を果たしているかどうか等の状況や一般社会への迷惑行為等の有無を総合考慮して通常人を基準として、社会通念によって判断されることになります。

犯罪歴は必ず調査される事が原則です。

したがって、申請時点で犯罪について虚偽申告や隠匿申請その他帰化の要件を満たさない情がある場合には必ず不許可になります。(この場合には、専門家に相談しあらためて不許可になった事情を精査【詳しく細かく調べること。】し、再申請を準備する事になります。)

特に税務関係(個人の場合源泉徴収、課税・納税証明など)の提出書類は多岐に渡り量も多いことから適正な処理(2つ以上の収入がある場合必ず確定申告しているかなど。)がされているかは特に重視されます。

納税状況も同一世帯全員の納税証明を提出しなければいけません。

納税義務があるのに1人でも未納税がいれば申請は受付されません。

即ち家族は同一生計であるので、家族の内1人でも未納者がいれば「脱税者」家族となるからです。

加えて年金についても厳しく審査されますので未納期間があった場合や、同一生計者の中に未納者がいる場合には申請前に是正する事が重要です。

素行要件チェックリスト

下記のリストは当所が長い間帰化にかかわった中で実際に素行要件に該当した実例です。

この素行要件の中で特に多いのが、入管法違反と交通違反です。

入管法違反については、事件からの経過年数・経緯など様々な観点からいつの時期だったら申請ができるかなど当所にご相談ください。

次に交通違反については、日本に長期在留すればする程又、通勤や運転を職業とする方は違反の頻度も高くなり回数も増える事は必然です。

違反や事故の回数、程度により具体的取り扱いが異なりますので当所にご相談下さい。

韓国籍の方が帰化するときの注意点(国籍喪失)

韓国籍の方が帰化申請する際に注意する点としては「国籍喪失」の手続きをする、という点です。

日本は二重国籍を認めていません。そのため、一般的に帰化申請が許可されたら国籍離脱の手続をする必要があります。帰化申請の要件の一つに「重国籍防止条件」というものがあります。

これは、帰化しようとする人は無国籍であるか、原則として日本帰化によりこれまでの国籍を離脱しなければならない、という法律です。

例えば、ロシアや台湾・香港・ベトナム等は帰化する前に日本(法務省民事局)から管轄法務局を通じて指示があり本国の国籍を喪失して無国籍になる必要があるのです。

韓国人の場合、国籍喪失届を韓国領事館に提出する義務があります。

現時点では放置しても罰則はありませんし、不定期に韓国側が勝手に国籍喪失の手続をする場合もあるようですがはっきりとした確証はありません。その事由は、韓国は二重国籍を認める国だからです。

そして、何よりも大事な事実として日本と韓国間での国籍喪失についての取り決めがないからです。