はじめに

現在中国籍で、日本に帰化したい、日本人になりたいと思っている方向けに、中国籍の方がどのような手続きを踏めば日本人に帰化できるのか、日本国籍になるための申請手続きの流れや注意点を解説します。

現在の中国籍から日本人への帰化の実態

法務省によれば、過去6年の中国からの帰化許可者数は概ね年間2000人から3000人で推移しています。最新(令和2年度)のデータでは、全許可者数8453人中、2374人が中国籍からの帰化となっています。(全体の32%)

中国からの帰化手続きの流れ

帰化全体の流れを把握したところで、中国人の帰化申請手続き特有の部分として、帰化申請時に、「領事証明」(令和3年7月12日から「国籍」→「領事」証明に変更)という書類を、在日本大使(領事)館で取得し、それを法務局に提出する必要があります。

背景として、日本では、成人の二重国籍を認めていません。

そのため、一般的には帰化申請時に「領事証明」を法務省(法務局)に提出することによって、法務省(日本)で申請者が官報に掲載された場合に、中国国籍法により中国の国籍が自動喪失することになり、申請者はその時に「帰化」することになります。

日本に帰化しようとする人は、無国籍であるか、原則として帰化の許可により、それまでの国籍を離脱しなければいけない、という「重国籍防止条件」というものがあります。

ですので、帰化申請をする中国人の方は、「領事証明」をもって、他国の国籍を取得した時に中国籍を喪失したことを証明します(停止条件)。

領事証明とは、帰化したらその国籍を離脱するという証明書であり、中国では「退出中華人民共和国国籍証書」と呼ばれています。

従来は、この退出中華人民共和国国籍証書を申請した時点で、パスポートが無効となっていました。

そのため、従前は「旧国籍証書」を申請するタイミングが非常に重要でした。

現在では、申請時点で中国のパスポートが失効することはありません。

それでは次に、手続きの流れの中で必要な書類について解説します。

中国人が帰化するための必要書類

1. 帰化許可申請書
2. 親族の概要を記載した書類
3. 帰化の動機書
4. 履歴書
5. 生計の概要を記載した書類
6. 事業の概要を記載した書類
7. 住民票の写し
8. 国籍を証明する書類
9. 親族関係を証明する書類
10. 納税を証明する書類
11. 収入を証明する書類
12. 在留歴を証する書類

以下、中国人の帰化手続きで必要な「公証書」の説明をします。

公証書は、証明する項目別に発行されるため、申請者本人や両親等の身分関係により、取得しなければならない公証書が違うことがありますので、専門家と相談の上で、ご自身に必要な公証書を確認してみてください。

・原則として、両親の婚姻から現在に至るまでの状況がわかる上記の証明書が必要です。

また、申述書(出生)の提出を求められます。
申述書(出生)は、原則として申請者の母親が書くもので、夫との間に生まれた子であることを証明するものです。

・領事証明
※もちろん、翻訳者明示の翻訳文も必要です。
※本国の各公証書につきましては、ご本人様又はご家族に取得して頂くしか方法がありませんので、ここに時間がかかることが多いです。事前に確認の上、早めの申請を心がけましょう。

上記の他、運転免許証や運転記録証明書等も必要となる場合があります。

中国籍の方が帰化するときの注意点(素行要件)

素行要件については、国籍法第5条第1項3号に規定されています。

したがって、素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態度、有罪判決を受けた者や執行猶予中の者は一定期間申請ができない事になります。

そして、納税の義務や年金加入の義務を果たしているかどうか等の状況や一般社会への迷惑行為等の有無を総合考慮して通常人を基準として、社会通念によって判断されることになります。

犯罪歴は必ず調査される事が原則です。

したがって、申請時点で犯罪について虚偽申告や隠匿申請その他帰化の要件を満たさない事情がある場合には必ず不許可になります。

特に税務関係(個人の場合源泉徴収、課税・納税証明など)の提出書類は多岐に渡り量も多いことから適正な処理(2つ以上の収入がある場合必ず確定申告しているかなど。)がされているかは特に重視されます。

納税状況も同一世帯全員の納税証明を提出しなければいけません。

納税義務があるのに1人でも未納税がいれば申請は受付されません。
即ち家族は同一生計であるので、家族の内1人でも未納者がいれば「脱税者」家族となるからです。

加えて年金についても厳しく審査されますので未納期間があった場合や、同一生計者の中に未納者がいる場合には申請前に是正する事が重要です。

素行要件チェックリスト

下記のリストは当所が長い間帰化にかかわった中で実際に素行要件に該当した実例です。

入管法違反については、事件からの経過年数・経緯など様々な観点からいつの時期だったら申請ができるかなどご相談ください。

次に交通違反については、日本に長期在留すればする程又、通勤や運転を職業とする方は違反の頻度も高くなり回数も増える事は必然です。

違反や事故の回数、程度により具体的取り扱いが異なりますのでご相談下さい。

中国人が帰化するときの注意点(国籍喪失)

中国籍の人が帰化する際に注意する点としては、以下のことが挙げられます。
・公証書の取得
・領事証明
・翻訳文の添付

一つずつみていきましょう。

公証書の取得の際の注意点

中国人の帰化申請の場合,必ず本人(家族)の身分関係を示す書類を取得するように伝えられます。

日本で生まれた場合や在日中国領事館で手続きをした事項であれば,日本の領事館で取得できる書類もありますが,原則,中国本国で身分関係を示す書類を取得する必要があります。

公証書については、申請人本人の分だけでなく,帰化申請に関係している親族の分の提出を求められる書類もありますので,その都度対応が必要になってきます。

領事証明の注意点

上述の通り、国籍離脱の意思表示を中国政府に認められたものが領事証明です。

・「領事証明」を取得するタイミング
法務局で帰化申請時に必ず必要になります。(但し、一昨年(令和2年3月〜9月頃のように、中国大使(領事)館が中国当局の指示により業務を一時的に閉鎖するなどの措置が取られた場合には、法務省もそれに応じて帰化時までに旧国籍証明を具備すれば良いなどの措置が取られることもありました。))

・「領事証明書」の取得場所
帰化許可申請者の住所地を管轄する在日中国領事館で取得する
※東京にお住まいなら,在日中国大使館へ,大阪にお住まいなら、在大阪中国総領事館になります。(他の地域にお住まいの方は、最寄りの住所地を管轄する中国領事館となります。)
中国領事館の場所

・「領事証明書」取得に必要な書類
1,パスポート原本とパスポートの写真ページのコピー
2,住民票原本(発行から3ヶ月以内),もしくは在留カード原本およびコピー
3,証明写真2枚(横3cm×縦4cm)
4,退出中華人民共和国国籍申請表