法人化のメリット
個人事業では、資金的に限界があり、また、行動範囲にも限界があります。また、個人事業主では、介護保険サービスや障害福祉サービスを提供することができません。利用者が介護保険サービスや障害福祉制度上の各種給付を受けるためには、サービス提供事業者が、都道府県や市町村の指定を受けている必要があります。指定を受けるには法人化が必須です。
法人形態にもさまざまな形態があります。介護事業・福祉事業を行う法人としては、社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人などを設立する方法が一般的です。一定条件の範囲であれば、収益事業を行うことも可能ですが、利益を配当することはできません。
社会福祉法人とは
社会福祉法人は、社会福祉法人を主目的とする場合に設立できます。社会福祉法人でなければ行うことができない事業(特別養護老人ホームなど)も数多く存在していることから、これらの事業を行う場合には、社会福祉法人を設立しなければなりません。
厳しい設立基準が定められており、所轄の認可を受け、登記することで初めて成立します。一般的に設立まで2年程度を要します。
設立後は、国などから手厚い補助を受けられる一方で、行政から厳しい監督を受け、複雑な会計処理が要求されます。その分、社会的信用は高いとされます。
NPO法人とは
NPO法人とは、特定非営利活動として規定されている20種類の活動を行う場合に設立できる法人です。
保健、医療又は福祉の増進を図る活動
社会教育の推進を図る活動
まちづくりの推進を図る活動
観光の振興を図る活動
農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
環境の保全を図る活動
災害救援活動
地域安全活動
人権の擁護又は平和の推進を図る活動
国際協力の活動
男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
子どもの健全育成を図る活動
情報化社会の発展を図る活動
科学技術の振興を図る活動
経済活動の活性化を図る活動
職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
消費者の保護を図る活動
前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
また、設立するには登記することと、所轄庁の認証を受けることが必要です。設立までにかかる期間も社会福祉法人より短めで、6カ月程度が一般的です。社会福祉法人と同様に、設立に際して税金がかかりません。
一般社団法人とは
一般社団法人は、事業目的に制限がなく、登記のみによって成立することができます。また、所轄庁の認可や認証は不要です。社会福祉法人・NPO法人と違って、毎事業年度終了後に決算書類を所轄庁に提出する必要がなく、公告のみでいいです。
設立に際しては、交渉手数料に約50,000円、登録免許税に60,000円かかります。
非営利活動法人のメリット・デメリット
メリット | 補助金・助成金の交付を受けやすい |
法人税・固定資産税などで優遇措置を受けることができる | |
行政が委託先を公募する場合に、非営利法人が優先的に協働相手として選定される傾向があり、多くの事業受託が期待できる | |
社会貢献をアピールすることで、比較的容易に寄付を集められる。 | |
デメリット | 営利法人と違い、自由な価格設定ができず、提供サービスが画一的になりがち。 |
補助金・助成金のみの公的資金のみでは、事業運営費用としては不足しがちで、本来事業以外に収益事業を行う必要がある | |
設立手続き・設立要件が厳しく、会社形態でできる事業ならば、会社を選択した方が手続き上の手間を省ける |
社会福祉法人の設立・認可の手続き
地域社会における社会福祉の発展を目指し、特別養護老人ホームの運営や保育所などの運営を行います。
<法人名や所在地を決定する>
法人名は特定の個人や団体の名称を使用することはできません。
<役員を決定・定款を作成する>
役員は6名以上の理事と、2名以上の監事が必要です。いずれも親族者などの人数制限があり、社会福祉事業の専門家や福祉関係者を含む必要があります。監事のうち1名は、財務諸表監査ができることが要件となっています。また、準備資金・資産に関する要件もあります。これらを具備した上で、定款を作成します。
<社会福祉法人にどんなメリットが..>
収益事業を除く所得が非課税となります。また、施設などに対する補助制度を受けることができます。
<社会福祉事業を安定供給するため資産が必要>
1.社会福祉施設を有する法人
物件の所有権を持つ、もくは国・地方公共団体から貸与・使用許可を受けることが必要です。
2.居宅介護事業、地域・共同生活援助事業を行う場合
5年以上の事業経営経験があり、地方公共団体から委託や助成、指定居宅サービス事業者や指定居宅支援事業者の指定を受けることが必要です。一つの都道府県内で事業を行う場合には、1,000万円以上の基本財産が必要です。
3.社会福祉施設の経営を行わない法人
設立後の収入が未知数のため、設立時に原則1億円以上の資産を基本財産として保有する必要があります。ただし、委託費など事業を継続するのに必要な収入が見込める場合には、国の所轄庁が定める額となります。
<社会福祉法人が行う事業の種類>
社会福祉事業・公益事業・収益事業に大別されます
社会福祉事業は、さらに第一種社会福祉事業・第二種社会福祉事業に分けられます
1.第一種社会福祉事業
入所施設サービスを指します。
2.第二種社会福祉事業
在宅サービスを指します。
公益事業は有料老人ホームを指します
<認可を受けるためには>
①資産の有無、②設立手続きや定款が法令に適合しているか、③社会福祉法人が目的に掲げる社会福祉事業の必要性の有無などが総合勘案されます。
具体的には、社会福祉施設の有無・社会福祉施設に利用するための不動産の有無が問われます。
<法人化に必要な書類>
①定款、②財産目録、財産が当法人に帰属していることの証拠書類、不動産の贈与契約書や登記事項証明書なと゜③事業計画書・収支計算書・社会福祉事業施設建設関係書類など多数の書類提出が求められます。
NPO法人の設立・認可の手続き
NPO法人を設立する場合、まずは設立発起人会を開催します。この発起人会で設立の趣旨、役員や会費、NPO法人の活動目的を設立趣旨書、定款、事業計画書、活動予算書にまとめます。
発起人会で設立総会を開きまずが、議事進行に伴い議事録を作成しておきます。
設立総会が終了すると、所轄庁(都道府県知事または政令指定都市の長)や法務局に出向いて設立に関する手続きを行います。順序としては、設立認証の手続き(当事者または行政書士)を行います。
この際に提出した書類は、一定期間、縦覧に供されます。縦覧期間は、申請書を受理した日から2カ月間です。その間に、所轄庁にて申請内容を審査され、認証か不認証の決定がなされます。
申請書または添付書類に不備があれば、受理された日から1カ月以内であれば、書類の補正をすることができます。
<認証申請のときに必要な書類>
提出書類 | 内容 | 提出部数 |
設立認証申請書 | 設立認証を求める申請書 | 1部 |
定款 | NPO法人の目的や根本規則を明文化したもの | 2部 |
役員名簿及び役員のうち報酬を受ける者の名簿 | 役員全員の氏名・住所を記載する | 2部 |
各役員の就任承諾及び誓約書の謄本 | 原本は申請者が保管する | 1部 |
各役員の住所及び居所を証する書面 | 住民票の写しが必要(コピーは不可) | 1部 |
社員のうち10人以上の者の名簿 | 社員のうち10人分を記載する | 1部 |
確認書 | 宗教・政治目的の団体・暴力団関係の団体でないことの確認 | 1部 |
設立趣旨書 | 法人格が必要な理由、申請に至るまでの経過などを記載 | 2部 |
設立についての意思の決定を証する議事録の謄本 | 設立総会の議事録、原本は申請者が保管する | 1部 |
設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書 | 事業の具体的な計画書 | 各2部 |
設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算費 | 活動予算書を提出する | 各2部 |
一般社団法人の設立の手続き
一般社団法人を設立するには、2人以上の設立者(設立時社員)が必要になります。次に定款を作成します。定款には、設立時理事を定めておきます。定款には、設立時社員の署名または記名押印した上で、公証人による認証を受けなければなりません。選任された理事は、一般社団法人の設立登記の手続きを行います。
一般社団法人の定款には、次の事項を定めます。
①目的、②一般社団法人の名称、③主たる事務所の所在地、④設立時社員の氏名又は名称と住所、⑤社員の資格の得喪に関する事項、⑥公告方法、⑦事業年度 |
注;剰余金や残余財産を社員に分配する旨の定めをしたときは、無効となりますので注意してください。
設立登記を行う前に、必要書類や印鑑などを準備しておきます。登記申請先は所轄の法務局です。申請書類を提出したら、登記手続きは数日から2週間程度で完了します。
一般社団法人の成立日は、提出日となっています。