民泊新法は、多様化する宿泊ニーズ等へ対応しつつ、公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止、無許可で旅館業を営む違法民泊へ対応すること等を目的に、住宅宿泊事業の届出制度や、住宅宿泊管理事業・住宅宿泊仲介業の登録制度などの一定のルールを定めた法律で、観光庁HPでは、「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」(以下「ガイドライン」といいます。」)が公表され、民泊新法にかかる解釈や留意事項等がとりまとめられています。

民泊新法では、原則として、用途地域に関わらず民泊を行えるようになります。ただし、届出を行う住宅が第三者からの賃借物件の場合や区分所有建物の場合には、賃貸借契約上の制限や管理規約上の制限などにより、民泊を行うことができない場合があるので注意が必要です。
また、宿泊日数や区域についても、別途、条例による制限を受ける可能性がありますので注意が必要です(法第18条)。

届出をした事業者は、宿泊者の衛生の確保や(居室の床面積を一人当たり3.3平方メートル以上確保すること等)、宿泊者名簿の作成・備付け、騒音の防止等の宿泊者への説明、周辺地域の住民からの苦情・問合せへの対応、玄関等への標識の掲示といった適切な責務を行うことが義務付けられ(法第5条以下)、都道府県知事の監督を受けることになります(法14条以下)。

ガイドラインでは、事業者の届出や義務について、次のような解釈や留意事項等が記されており、参考になります。

1.居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションでの届出はできない

2.日数の算定は届出住宅ごとに、実際に人を宿泊させた日数で算定する

3.宿泊者の退室後、住宅及び設備の破損の有無や、宿泊者の遺失物の有無等を確認し、宿泊前の状態と大きな乖離がないよう維持する

4.届出を行うにあたっては、事業を取り巻くリスクを勘案し、適切な保険(火災保険、第三者に対する賠償責任保険等)に加入することが望ましい

5.家主居住型の場合、届出住宅内に居住していることが必要であり、隣接して居住する場合は対象とならない

6.消防法令適合通知書の提出が求められる

7.宿泊者名簿には、宿泊者全員を記載する必要がある

8.宿泊開始前に宿泊者全員に対し、対面又は対面と同等の手段(テレビ電話やタブレット端末等)により、本人確認を行う必要がある

9.外国人宿泊者に対しては、旅券の提示を求め、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存する

10.ごみは事業活動に伴って生じた廃棄物となる

11.周辺地域の住民からの苦情等に対し、深夜早朝を問わず、常時、対応又は電話により応対する必要がある。宿泊者が滞在していない間も対応する必要がある

12.滞在中の宿泊者に注意等を行っても改善しない場合には、現場に急行して退室を求める等、必要な対応を講じる

1年間に180日を超えて宿泊させ、旅館業法の許可も取得していない場合、超過した宿泊分については、旅館業法違反となる

事業者は、既述のとおり、常時、適切に対応することが求められるため、実際に事業を行うには、相応にハードルが高そうです。また、年間の宿泊提供日数が180日を超えてはならないという壁もあるため、事業化を検討するには、旅館業法上の簡易宿所(または特区民泊)と比較をし、メリット・デメリットを検討することが必要になります。