監理団体に賠償命令
技能実習計画が満了する前に強制的に帰国を求められたなどとして、フィリピン人の元外国人技能実習生が監理団体と実習先の会社に計約540万円の損害賠償を求めた裁判の判決が29日、熊本地裁であった。佐藤道恵裁判長は訴えの一部を認め、監理団体に56万円の支払いを命じた。
判決などによると、原告の男性(32)は2015年8月にとび職の技能実習生として来日。山形県で約1年間実習した後、16年8月に熊本県御船町にある建築会社に転籍し、熊本地震後の民家の解体工事や道路整備などに従事した。18年1月、会社への不満などから退社を表明し、不本意ながら帰国を希望したが、直後に他の実習先への転籍を希望した。
法令などによると、監理団体は技能実習生に対し、意に反して技能実習を中止して帰国する必要がないことなどの説明をし、実習継続を希望する場合は他の受け入れ先などとの連絡調整をする義務がある。だが、被告の監理団体「協同組合アーバンプランニング」は、男性が就労する意欲を失ったと安易に判断し、旅券と在留カードを違法に預かり、書面による意思確認をせずに帰国手続きを進めたと判決は認定。男性の権利を侵害し、不法行為があったとして賠償を命じた。
とび職の実習生として来日したにもかかわらず、別の内容の業務をさせられたとの原告の訴えについては、判決は「被告会社の業務はとび作業の審査基準に充足している」などとして退けた。